COLUMN

高性能賃貸の可能性-遮音性と快適性と資産性

今年の1月から3月にかけて、高性能賃貸住宅に関する貴重な見学や勉強の機会をいただきました。
実際の建物や現場に触れ、設計・施工・性能・事業性まで多角的に学ぶことができた、非常に有意義な3か月でした。

1月|夢建築工房さんを再訪し、高性能賃貸マンションを見学

1月には、夢建築工房さんを再び訪問させていただき、i+i設計事務所さんが設計された高性能賃貸マンションの見学と、建物内で行われた遮音測定に立ち会うという貴重な機会をいただきました。

高性能賃貸木造マンション

木造3階建てでありながら、マンションとして求められる防火性能を備え、外壁は板貼り仕上げという希少な建物。
その設計内容はもちろん、実現している施工力の高さに感服しました。
細かな納まりや仕様も非常に参考になる点が多く、コストをかける部分と抑える部分のメリハリ、コストを抑えながらも安っぽく見せないデザインの工夫など、大いに刺激を受けました。

肝心の遮音性能ですが、床・天井の構成は木造としては最高水準と言えるレベルでした。
構造・施工・コストのバランスまで踏まえると、これ以上を目指すのは簡単ではないと感じる内容でした。
現場測定では、軽量床衝撃音と重量床衝撃音の試験が行われ、実際の性能を確認しました。

高性能賃貸の遮音試験

隣戸への音漏れは、鉄筋コンクリート造と遜色ないと感じられるほど高い遮音性能が確保されていました。
一方で上下階の住戸間については、やはり木造ならではの限界も見えてきました。

それでも一般的な木造賃貸と比べると遮音性は格段に優れており、軽量鉄骨などプレファブメーカーの性能は十分に満たすレベルです。
また、軽量床衝撃音に対してはカーペットやマットが非常に有効であることも、今回の大きな学びのひとつでした。
重量床衝撃音については、入居者の家族構成や生活スタイルによって課題が生じる可能性もあるため、やはりメゾネット型の長屋住宅のような住戸構成のほうが音の問題をクリアしやすいという印象を持ちました。

今回の試験結果を踏まえ、さらなる改良で遮音性能を高めようとされている夢建築工房の岸野社長は、根っからの技術者で、その姿勢には、心から尊敬の念を覚えます。

ゾーン断熱リフォームの住まいも見学

遮音測定の後は、夢建築工房さんが施工されたゾーン断熱リフォームのお住まいも見学させていただきました。

ゾーン断熱リフォーム

東京大学の前真之先生がサーモカメラで計測される横で見学させていただいたのですが、真冬の寒い日にもかかわらず、朝から無暖房で室温20℃以上を維持していたことには驚かされました。
何より、その体感が「ただ暖かい」のではなく、柔らかく包まれるような優しい温熱環境で、思わず感動するほどでした。
この感覚は、日頃から高性能住宅を体験しているからこそ感じられる差異であり、体感してこそ伝わる価値だと改めて思います。

夢建築工房さんを訪れるたびに学びがあります。「スーパー工務店」と称されるのも、納得のひと言です。

2月|小泉木材さんの高性能賃貸住宅を見学

2月には、小泉木材さんの高性能賃貸住宅を見学させていただきました。

小泉木材さん高性能賃貸住宅

構造や省エネ性において高性能であることはもちろん、仕上げや素材のクオリティが賃貸とは思えないレベルで、惜しみなく使われた木の仕上げや自然素材には本当に驚きました。
超高性能な木製窓や木製玄関ドアも採用されており、断熱・省エネ性能においてもトップクラスの賃貸住宅であることは間違いありません。
日本エコハウス大賞グランプリという実績も、強く納得できる建物でした。

小泉木材さん高性能賃貸

小泉社長のお話からは、未来の世代を担う子どもたちへの思いや、住まいづくりを通して社会に価値を返していこうとする強い志が伝わってきて、深く心を動かされました。
事業計画においても、将来のメンテナンスコストまで考慮して逆算した資産性を重視されており、高性能だからこそ成立するロジックを丁寧に教えていただきました。

単に短期的な収益の最大化を追う従来の投資家的発想ではなく、「社会全体で豊かになる」という三方よしの精神で事業に向き合われている姿勢に、深く共感しました。
現場でご案内いただきながら、質問にも快くお答えいただき、本当に感謝しています。

3月|高性能賃貸研究会の勉強会に現地参加

3月には、高性能賃貸研究会の勉強会に初めて現地参加しました。

オンラインでは2年間欠かさず受講してきましたが、やはり対面での受講は集中度が違います。
加えて、一度は訪れてみたかった東京大学の講義室で受けられたことも、個人的には大きな喜びでした。

東京大学訪問

前先生の講義は、いつもながらメッセージの切れ味が鋭く、専門的な内容をわかりやすい言葉で伝えられる稀有な方です。
「住宅で暑さや寒さに苦しむ人がいなくなるように」「2100年に暮らす人にも誇れる住宅を当たり前に」というビジョンを掲げ、使命感を持って発信し続けておられる姿には、毎回ながら頭が下がります。

東大講義室高性能賃貸受講

当日は岸野社長・小泉社長のお話を直接伺える場面もあり、理解がさらに深まりました。
多くの発表の中でも特に印象に残ったのが、現役の大家さんたちのお話しです。
「賃貸住宅の王道は持ち続けて利益を生み出し続けること。その視点から考えると、行きつく先は高性能賃貸」という言葉は、地主としての長期的な視点から来る説得力がありました。
さらに意外だったのは、投資家として活動されている大家さんも同じ考えに賛同されていたこと。高性能賃貸に対する価値観が確実に広がりつつあり、潮目の変化を肌で感じた瞬間でした。

融資面の課題や、高性能化が評価額に反映されにくいといった課題は、まだ残っています。
ただ、それを逆手にとって相続対策として提案できるという視点も共有され、新たな気づきをいただきました。

発表や質疑応答は非常に熱を帯び、予定時間を超えるほど充実した会となりました。

日帰り出張だったため、白熱したディスカッションの途中で退室せざるを得なかったのは残念でしたが、それ以上に得られたものが多い、密度の濃い一日でした。

東京大学赤門

ちなみに、今回は一度見てみたかった赤門を見ることはできませんでした。

高性能賃貸の可能性を改めて実感して

この3か月を通して改めて感じたのは、高性能賃貸住宅は単なる「性能の高い賃貸」ではないということです。
入居者の快適性や健康、省エネルギー性にプラスして、資産性、地域や社会全体の豊かさにもつながる可能性を持った存在だと実感しました。

設計・施工・温熱環境・遮音・事業性と、考えるべき視点は多岐にわたりますが、だからこそ取り組む価値があります。
今後もこうした学びを積み重ねながら、実際のプロジェクトに取り入れていきたいと思います。