事務所兼自宅が築12年となり、漆喰塗りの外壁に汚れやカビが目立つようになりました。
漆喰の壁は強いアルカリ性のため当初はカビに強く、汚れも漆喰の自浄作用により、綺麗な状態を保つことができます。
しかし、弱くても酸性の雨が繰り返しかかる事で徐々に中性化されて、最終的にはカビが発生してしまいます。
この汚れやカビは洗浄やカビ取りを行う事で、ある程度きれいにすることはできます。
ただ時間が経つとまた汚れやカビが出てきて、その繰り返しになるので、長期間きれいな状態を保つには塗装をするのが一番です。
またもう一つの懸念点として、漆喰自体は水を通すため、繰り返し下地のモルタルへ水が染み込む事で外壁自体の劣化が進んでしまう恐れがあると言う点です。(とは言っても30年以上経ってからの話ですが)
それを防ぐには外壁表面に防水性のある仕上げ塗装を行うのが一番ですが、漆喰外壁の上から塗装を行うに当たり、問題があります。
それは何も考えずに普通に塗装を行うと少し時間が経った時に漆喰が剥がれてきてしまう点です。
ですので、訪問営業をする外壁塗装のリフォーム屋さんが外壁の仕上げが漆喰塗りと聞いて、退散することもあるようです。(実際に施主の方に聞いた話です)
漆喰でも日本の漆喰やヨーロッパの漆喰など種類がある為、その素材に合った下地処理と塗料を選ばないとダメで、経験と知識も必要です。
オーブルホームではここ数年で10年以上経った施主様からご依頼頂き、漆喰塗りの外壁に塗装を行ってきました。
今回、自宅兼事務所の外壁も塗装のリフォームを行いましたので、その詳細をご紹介します。
漆喰塗りの外壁は雨に濡れると色が濃く変化します。
その変化も一つの魅力ではありますが、先ほども紹介した通り、繰り返し濡れることで汚れやカビが出てしまいます。
特にこの写真のように屋根や庇のない手前の壁は家の性能でもご紹介した通り、カビが目立って気になる人も多いかと思います。(これも変化として受け入れる事が出来る方もいらっしゃると思いますが)
事務所の入り口と言う事もあり、一般に綺麗と思って頂けるように塗装を行いましたので、その流れをご紹介。
塗装を行うために、まずは仮設の足場を組みます。
この時に駐車場の入り口や玄関へのアプローチを確保しながら、作業もしっかり行えるようにするのがポイントです。
足場を組んでから全体のチェックを行い、外壁の割れなど補修が必要な部分を確認します。
特に窓周りのコーキングは割れが出やすい為、しっかりと処理を行う必要があります。
今回、木製窓は出来る限り明るい色目にするため一度シミ抜きを行い、表面を少し削ることで木の元々の色を出しました。
窓周りのシーリングを綺麗に撤去するために削っていきます。
次にカビや汚れを落とす為の洗浄剤を散布して、染みこむまで養生します。
足場があるうちに屋根の確認も行い、高圧洗浄していきますが、太陽光発電パネルも一緒に洗ってもらいました。
太陽光パネルも長年、風雨にさらされる事で汚れが付いて効率も少し落ちてくるため、本当は定期的に洗浄した方が良いのですが、発電効率がそこまで落ちているわけではなかったので、そのままにしていました。(ただ面倒くさいだけと言う事も・・)
外壁の洗浄剤がしっかりと浸透した後、高圧洗浄を行って表面の汚れを取ります。
この時に圧力が強すぎると漆喰を剥がしてしまう恐れがある為、必ず水圧調整を行い、注意しながら洗っていくのがポイントです。
洗浄後、しっかりと乾かしてから窓周りのシーリングを行いました。
マスキングテープで養生することはもちろんですが、プライマーを塗って下地とシーリング剤の接着を確実に行います。
このシーリングも乾かす必要がある為、養生期間に意外と時間が掛かり、雨の日以外でも作業ができない日もあります。
シーリングを乾かす間に外壁の凹みや傷などの不陸を補修材で埋めていきます。
続けて窓の養生を行い、塗装の準備がようやく完了です。
ここからが塗装になりますが、まず漆喰外壁の下地処理としてシーラーを塗っていきます。
このシーラー材が非常に重要な役割を果たし、漆喰の奥までしっかりと浸透して固めて、はがれにくくしてくれます。
通常でしたらシーラー処理した後は仕上げの塗装を行います。
しかし、事務所が幹線道路の近くで大きな車が通る時に段差で振動がある立地の為、細かい割れが無数にあり、補修材で処理しきれませんでした。
そこで、ひび割れを埋めてさらに割れにくくする効果のある下塗り材を塗りました。
こうすることで塗装に厚みが生まれ、漆喰の時にあったコテ塗りの質感は全体に平滑な仕上がりになります。
(シーラーの上に直接、塗装すると漆喰塗りの質感もそれほど失われず、独特の風合いに仕上がります)
下塗りを行ったところでまず軒天や破風板、鼻隠しの塗装を行っていきます。
外壁と軒天などの下地が違うので、下地処理や仕上げ材も違うものを使用する必要があります。
そのぶん手間は掛かりますが、適材適所の基本に従って選んだ塗料の使用は絶対条件です。
軒先の鼻隠し部分は雨樋があって隙間は狭いですが、細い刷毛を使って確実に塗装していきます。
こういった細かい部分が塗装できていないと、そこから劣化して取替えが必要な部分が出てくるため、丁寧な職人さんの施工が欠かせません。
下塗りが乾くのを待って、仕上げの塗装を行いました。
この仕上げ塗装も2回は塗る必要があり、それにより確実に塗膜を作って塗りムラも無くします。
仕上げ材は耐久性とコストのバランスを考えて、信頼性の高いメーカーの塗料を採用。
外壁の塗装が終わると玄関ドアなどの塗装も行っていきます。
この塗料も耐久性を考慮しながら素材に合ったものを選んでいます。
木製サッシなどの木部は表面をよく研磨してからオイル塗装を施してもらいました。
木製サッシもメンテナンスをしっかりと行う事で長く綺麗な状態を保ちながら味のある経年変化を楽しむことも出来ます。
事務所入り口に上がる鉄骨階段もしっかりと塗装してもらっています。
この鉄骨階段は建築当時に溶融亜鉛メッキの処理が行っていた為、錆び一つない状態でしたが、表面の塗装が劣化していた事とそれを補強する意味でも再塗装を行いました。
外壁の塗装が終わると仮設足場を外し、さらに隣地との境界にあるブロック塀なども塗装してもらって、塗装工事が完了しました。
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漆喰の壁は淡いクリーム色でしたが、塗装はベージュがかったグレー色で一般的にグレージュと呼ばれる色合いです。
それも光の当たり方で色の見え方が変わり、太陽光の当たる面では白っぽく、曇りや雨の中ではよりグレーが強く見えます。
そんな色の見え方の変化が楽しめるので、塗装の仕上げも良い感じになったのではないでしょうか。
漆喰塗りの外壁でも塗装は可能で、塗り替えの過程やその効果をご紹介させて頂きました。
もし漆喰外壁の塗り替えを考えられていて、そのタイミングや依頼先に悩まれている方は一度、ご相談頂ければと思います。